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諏訪晴美の味わうベランダ・ガーデニング

育てる〜今日からはじめるベランダ・ハーブ〜

ベランダで育てるということ

植物がくれるおだやかな安心感は本当にかけがえないもの。そんな植物との関わりを楽しむためにオススメなのが「ベランダ・ガーデニング」です。ベランダは、自然(外界)と私たちの生活の接点。植物がのびのびと育ち、さらに人を楽しませる、最高のステージでもあります。

ところでガーデニング初心者にピッタリな植物といえば「ハーブ」。誰にでも育てやすい上に観賞用にもなり料理にも使えるなど、多様に楽しむことができます。そこで今回はハーブを使ったベランダ・ガーデニングをご紹介します。育てやすいハーブの品種、寄せ植え方法、よくある失敗の理由やベランダならではの育て方のコツなどをお伝えします。

MEMO ベランダの日当りで育てやすい植物は変わります。

ベランダ・ガーデニングをはじめるときに気をつけたいのは「何を育てるか」。植物は、自分に合った環境でこそ元気に育つことができます。つまり、私たちが植物を選ぶときも「育てる場所に合わせた植物を選ぶこと」が大切です。

例えば、日のあたるベランダで育てたいのは「日なた(1日のうち日が長く当たる場所)」を好む植物。当たり前のようですが、植物が好む環境は大きく「日なた」「半日陰(短時間でも日の当たる場所)」「日陰(日の当たらない場所)」と分かれます。たとえば日陰を好む植物をよく日の当たる南向きのベランダに置くと、すぐに弱ってしまいます。日陰向きの植物(多肉植物、シダ類、クリスマスローズなど)は日の入らない、北向きなどのベランダを持つ人にオススメです。

ちなみにベランダは季節の影響も大きく受ける場所です。
夏の太陽の直射日光が差すベランダでは過剰な光と熱で植物の元気が奪われがち。遮光ネットや緑のカーテン(木枠や紐にツタ植物を絡ませたもの)などで光を軽減したり、鉢の下に空間をつくって床からの照り返し熱がこもらないようにしましょう。

また、日の当たらない真冬のベランダには北風ばかりが吹き込み、冷えて乾燥します。あらかじめ冷えや乾燥に強い(耐寒性があり乾燥を好む)植物を選んだり、場合によっては植物を室内へ避難させることも必要です。

ハーブの苗を選びましょう

では早速ベランダで育てるハーブを選んでみましょう。ベランダの環境や、ハーブの持つ効能、使い道、見た目の可愛さなどで選んでみてください。尚、ハーブの苗は園芸店や花屋などで扱っています。

ハーブいろいろ

日なた向きの植物が多いですが、真夏の直射日光は避けた方が良いものが多いです(前述したように日陰を作ったり鉢の下に空気の流れを作ってあげましょう)。

バジル(日なた向き)春・秋はできるだけ明るい場所/夏はベランダ内の明るい日陰

初夏から秋にかけて楽しめるバジルは、爽やかな苦みが特徴。身体をあたためたり、かゆみをやわらげる効果があります。イタリアン料理の食材としてよく使われていて、特にトマトやチーズ、オリーブオイルとの相性がバツグンです。

イタリアンパセリ(日なた向き)

ビタミンCや鉄分が豊富。美肌や口臭予防、貧血予防などが期待できる、まさに「女性の味方」的なハーブです。他のパセリに比べて香り高く苦みが少ないのも特徴。肉料理やスープなどに幅広く活用できます。

パセリ(日なた向き)

日本で一般的に知られているパセリで、本名は「モスカールドパセリ」。イタリアンパセリ同様、ビタミンCや鉄分が豊富です。

チャービル(日なた向き)

消化促進、血行促進などの効果を持つハーブ。フランスではセルフィーユと呼ばれ、フランス料理に欠かせないハーブとされています。甘やかでやさしい味わい。サラダやスープ、玉子料理などに。

ディル(日なた向き)

気持ちを落ち着かせたり、消化を促進したりとからだにやさしいサポートを期待できるハーブ。「魚のハーブ」と呼ばれるほど魚料理との相性がよい他、ジャガイモ料理、玉子料理などに使われます。

ジャーマンカモミール(日なた向き)

消炎効果、リラックス効果などをもつハーブ。薬用になりよく使われるのはジャーマンと呼ばれる品種(写真のもの)。生育すると小さくて可憐な花を咲かせ、その花を摘んで(生のままカップに入れて)お湯を注げば、カモミールティーを楽しめます。

ミント/スペアミント(日なた向き)

ほんのり甘みのあるさわやかな香りで人気のミント。生の葉にお湯を注いで飲むことで、胃もたれや食欲不振、ひきはじめの風邪などに効果を発揮します(効能は他のミントも同様です)。

ミント/アップルミント(日なた〜半日陰向き)

りんごを思わせる甘く爽やかな香りとやわらかな毛の生えた葉が特徴。ハーブティーをはじめ、料理やポプリなどに活用できます。

ミント/オレンジミント(日なた〜半日陰向き)

オレンジピールに似た強く清涼感のある香りを放つミント。光沢のある葉も特徴です。柑橘系のジュースに添えるのがオススメ。

ローズマリー(日なた向き)

古代ローマ時代から若返り効果や美容効果があるとして重宝されてきたハーブ。肉料理や魚料理の臭み消しとしても活躍します。写真は、小さな苗から成長したもの(品種はミスジョサップ)。ちなみにローズマリーは、草ではなく樹木の一種です。

ラベンダー(日なた向き)(写真はシルバーアヌーク)

春から初夏にかけて紫やピンクの花を咲かせるラベンダー。花には鎮静効果があり、香りをかぐことで気持ちが落ち着きます。また乾燥させても花色や香りが保たれやすいため、ポプリにして楽しまれることも多いです。(写真は開花前。品種によって大きく成長するものもあるので購入時に生育後の大きさを確認してください。)

苗の見分け方

苗を選ぶときはできるだけよい苗を選びましょう。

  • 葉先までピントして色が鮮やか
  • 下の方の葉が枯れていない
  • 茎が間延びしていない
  • 害虫がついていない
  • 株の根元がしっかりしている

MEMO 寄せ植えするなら、仲間を集めよう。

ハーブはいずれも繁殖力が強いため大きな鉢で育てることでより元気に育ちます。とにかく1種類を増やして楽しみたいなら単独で植えるのがベスト。でも、にぎやかにいろいろ収穫して楽しみたいなら寄せ植えがオススメです。

寄せ植えをするときは、適した生育環境(乾燥した土を好むか、湿った土を好むか)や目的(料理用、香りを楽しむ用など)ごとに苗を集めましょう。

たとえば乾燥した土を好むローズマリー、ラベンダー、セージ。これらは香りを楽しむこともできるハーブです。また料理用としてバジル、イタリアンパセリ、チャービル、ディルなどを組み合わせると便利です。もちろん見た目で組み合わせを考えるのも楽しみのひとつ。

ただしミントは単独で育てるようにしましょう。香りが強く移りやすい上に、他を枯らすほど根を張ってしまうからです。どうしても寄せ植えしたいときは、大きな鉢を用意したり、土の中に仕切りを入れたりしましょう。

ハーブ苗を鉢に植え替えましょう

買って来たハーブ苗は、必ず鉢に植え替えましょう。販売時に使われるビニール苗ポットは、植物の成育に必要な量の土(=根から吸い上げる水や栄養の一時置き場)があまり入っていないため、根っこにとってはとても窮屈な環境です。のびのびと根が張れて、土もたっぷりな環境を用意しましょう。植え替えをするときには、以下のものを準備しましょう。

必要なもの

一般的なポット型、横長のコンテナ型、浅く広いロウボウルなどいろいろな形があります。目的やイメージに合わせて選びましょう。

用土(園芸用の土)を用意しましょう。用土には様々な種類があり、用途に合わせた組み合わせが必要です。初心者には、育てる植物に合わせて用土をブレンドした「培養土」が便利です。ハーブ用、花用などを目的に合わせて選んでください。

鉢底石(および鉢底ネット)

鉢から土がこぼれ落ちるのを防いだり、害虫が鉢底から侵入するのを防いだりします。特にマンションのべランダで土が流れ出ると排水溝の目詰まりなどにつながるので、必ず用意しましょう。

  • 写真は鉢底石のみ

ミニスコップ

苗を植えつけたり、鉢に土を入れるために使います。苗と鉢のスキマに土を入れる、仕上げの作業のときには口が細めのものを使うと便利です。

手袋

爪や指を土で汚したくない人向け。ただし手袋を使うことで苗ポットから苗をとりはずすときに(力の加減がわからず)根っこを傷つける怖れもあります。できればガーデニングは素手で楽しみましょう。

ジョウロ

寄せ植え直後の苗は、環境が変わることで一気に元気がなくなります。寄せ植え後すぐに水を与えてあげるためにも水入りのジョウロを用意しておきましょう。

MEMO 鉢選びは楽しみながら、きっちりと。

インテリアや購入時の気分に合わせて買ってしまいがちな「鉢」。でも、鉢を選ぶときにいちばん大事なのは「サイズ」です。

実は、植物は見える部分(枝葉)と土に隠れている部分(根っこ)のボリュームがほぼ同じという状態を保ちながら成長します。植え替えする植物がどれくらいまで育つかをイメージしながら、ゆとりある大きさの鉢を選びましょう。

デザイン先行で極端に小さな鉢を選ぶと、根っこが鉢の中でギュウギュウ詰めになり、せっかくの苗が成長できなくなってしまいます。

ハーブを寄せ植えしましょう

いろいろ収穫して楽しめる寄せ植え。その賑やかな見た目は、ベランダの雰囲気を一気に華やかにします。というわけでベランダ・ガーデニングの第一歩として寄せ植えの方法をお伝えします。
先に紹介した通りハーブを集め、道具をそろえたら、早速挑戦してみましょう!

寄せ植えの流れ

1)鉢底石を入れる

鉢底ネットを鉢穴の上に。
(今回は4つのハーブの寄せ植えに対して直径約40cm、深さ30cmほどの鉢を使用)

その上に鉢底石を入れます。
ハーブを育てるときは、とくに鉢底石をたっぷり入れてください。

2)培養土を入れる

培養土を入れます。
初心者には市販のハーブ用培養土がオススメです。上に苗を並べることを考えながら適当な量の土を入れてください。

3)苗をポットからはずす

それぞれの苗をポットからはずします。根が硬く絡んでいる場合は軽くほぐしましょう。

  • 環境変化に弱いパセリやコリアンダーの場合は、根っこをできるだけくずさないようにしましょう。

4)苗を植える

鉢の中に苗を植えていきます。

苗の株元(茎と根っこの境)の高さがそろうように、根の下や横に土を足しながら、やさしくポンポンと叩いて土を固めていきましょう。

5)土を入れてあげたら完成


順に苗を埋めながら、たっぷり土を入れてあげたら完成です。

植え替え、寄せ植えが終わったらすぐにたっぷりの水をあげてください。

ハーブを育てましょう

寄せ植えしたハーブを育てながら、収穫を楽しみましょう。
育てるときのポイントは、過剰に水や栄養を与えないことです。

水やりは、土の状態を確認しながら行います。ガーデニング経験が少ないとついつい水をあげ過ぎてしまいがちです。ハーブは乾燥を好むものが多いので、土の表面が乾いているのを確認してから水を与えるようにしましょう。また、植物は昼間に水を吸収するので、夜に水をあげると根っこが細く弱くなってしまいます。水やりは朝におこなうようにしましょう。

肥料のあげ過ぎには注意してください。種類によって異なるので調べてからあげるようにしましょう。
ハーブが育ってきたら、収穫して苗の生長を促しましょう。

イタリアンパセリなどは、根本にいちばん近い節のところで摘み取りましょう。ミントなどの繁殖力が強いハーブは、株元(土から出てすぐの部分)から切り取っても次の芽が育ちます。

摘みとったハーブは料理に使ったり、乾燥させて香りを楽しんだりしましょう。(次回、ハーブを使った料理をご紹介します)

ベランダだから気をつけたいこと

ベランダで植物を育てるとき、気をつけたいことがふたつあります。ひとつは「排水溝をつまらせない」ということ、もうひとつは「モノを落下させないこと」です。

ベランダは風通しがよいため乾燥しやすく、水やりの回数も多くなります。それは排水溝に水が流れることが多いということ。土や落ち葉などが流れこんで詰まり、排水溝以外のところから下の階へ水が流れてしまうことにもなりかねません。あらかじめ市販のネットを設置したり、こまめに掃除をするようにしましょう。

またベランダの内外にモノが落下すると、下の階の方や通行人の方をまきこむ危険があります。鉢が割れたり土がこぼれたりしないよう、不安定な形の鉢を使うのはやめましょう。また(鉢に触ろうとした)悪意ない子どもがうっかり落下させてしまうことがないよう、高過ぎる台に鉢を置いたり、ハンギング鉢を使うことはやめましょう。

MEMO 漢方で「土」と「植物」が変わる?!

いま、一部の農家では、漢方薬を活かした「漢方農法」が取り入れられはじめています。漢方農法とは、漢方生薬と漢方の煎じ滓を土や活性剤に使用する農法です。漢方が土壌成分のバランスを整え、作物の自己治癒力を引き出します。

農薬で病害虫を退治する必要がなくなり、化学肥料も使わない漢方農法。それによって野菜、くだものなどの本来の美味しさを蘇らせるのか「市販品とはひと味違う!」と根強いファンが生まれています。

一般向けにガーデニング用の土や活性剤も市販されているので、より健康的なベランダハーブ栽培を目指して取り入れてみるのもいいかもしれません。

KampoGarden

終わりに

今回のベランダガーデニング特集はいかがだったでしょうか? ベランダに置かれた「ハーブの並ぶ小さな庭(鉢)」をながめるだけでも、心がなごむのを感じる人も少なくないと思います。

さて、次回は、ひとつレベルアップ。ベランダでのフラワー・ガーデニングの方法、そしてベランダハーブを使ったカンタンレシピをご紹介します。

植物が身近にある暮らしは、自分を幸せにしてくれることをいつも実感しています。植物が私にくれるもの。それは優しい気持ちで、自然を愛する気持ちになるのかなって。

諏訪 晴美(すわ はるみ)

プラントデザイナー。'00年町田ひろ子アカデミーガーデニングプランナー科卒業。同年NY州Manhattanville Collegeに留学。'02年成城大学経済学部経営学科卒業。'06年より(株)木楽舎月刊ソトコト勤務。同年榊原八朗氏に師事。'07年6月 plant design office Atelier Yukiyanagi(アトリエ ユキヤナギ)設立。「料理を『美味しい』と感じる瞬間のような感動を植物で演出する」をテーマに活動中。

  • 本ページ内に掲載の情報は2012年4月時点のものです。