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特別号 防災特集

地震防災のポイント

国崎 信江(くにざき のぶえ)

防災関連専門委員会所属。危機管理アドバイザーとして、全国で防災・防犯対策の講演を行う傍ら、NHKなどのメディアに多数出演し、広く防災・防犯情報を提供している。
『マンション・地震に備えた暮らし方』(つなぐネットコミュニケーションズ)、『狙われない子どもにする!親がすべきこと39』(扶桑社)など、著書も多数。

防災の基本は、備えと安全確保、そして心構え

東日本大震災から5年。災害直後から被災地に入り、今日まで様々な形で支援をして参りましたが、被災地の皆様にとってはこの5年は苦難続きの連続でした。災害で甚大な被害が発生すると長きにわたり大変な苦労があることを私たちは忘れてはなりません。そのためにもここで東日本大震災を振り返り、わがこととして防災を考えていきましょう。

東日本大震災は、想定以上の規模でした。実際我が国ではこれまで、マグニチュード9.0以上を想定した防災を考えてきていませんでした。また、これほどの広範囲の地域で大震災が起きたことも未曾有のことでした。

そしてその地震の後に発生した津波によって町が壊滅し多くの犠牲者を出す甚大な被害が発生しました。多くの方が津波に巻き込まれたなか、救われた家族もあります。たとえば、岩手県陸前高田市の、ある漁師の方は「100回地震があったら100回逃げろ、どうせ逃げるなら、他人の倍逃げろ。小心者と笑う奴は100回目の本当の津波に呑まれる」と祖父からずっと言われ続けてきました。当日は教訓を実行し、家族が助かりました。このように、日頃からいざという時の行動を考えていて、当日その通りに動いたことで救われた事例はいくつもあります。

東日本大震災で巨大地震が終息したわけではありません。わが国は地震活動期の最中にあり、いくつもの巨大地震の発生が予測されていま す。誰もが、明日被災者になってもおかしくない状況なのです。東日本大震災の被災地に心を寄せながらも、明日起こるかもしれない災害に対し、我がこととしてしっかりと備えていくことが大切です。今回の記事では、今すぐできる、マンション室内の見直しと、管理組合として取り組むべきことをご紹介いたします。今日からでもすぐできる防災対策をぜひ実践してください。

マンションの室内で、今すぐできる地震防災5つのポイント

阪神・淡路大震災では、犠牲者の8割の方が家屋の倒壊や家具による圧死・窒息死されました。その点、最近のマンションは耐震性に優れており、安心できる構造となっています。しかし、せっかく耐震構造のマンションに住んでいながら、室内の防災対策を施していなかったことで、割れたガラスで大怪我をしたり、飛んできた家具で家族が命を落としたりしては台無しです。
いますぐ、室内の防災対策を見直しましょう。

POINT 安全に避難できるか?室内の避難動線をチェック

室内から室外へ避難する動線上の安全を確保します。特に玄関へつながる廊下に、倒れる可能性のある固定していない家具や、割れやすい鏡・ガラス類・陶器などがあればすぐに移動しましょう。また、外部への避難経路である玄関まわりに、倒れたら玄関をふさいでしまうものや危険なものが置かれていないか、今一度チェックしてください。

POINT 家具や家電は凶器になる!配置の見直しと固定

震度6以上になると、固定していない大型家具は室内で飛び交い、凶器となります。ソファやベッドまわりなど、常時人がいる場所近くには大型家具を置かないように配置を見直します。大型の収納家具が配置換えできない場合には、処分することも検討してみてください。災害時に倒れる可能性のあるタンスや戸棚は、「タンス部屋」としてすべて一室に集めてしまうのも一案です。

POINT 落下物に注意!高い位置のモノを排除・移動

本棚や食器棚の上に、重いモノや箱類を置いていませんか?背の高い飾り棚に、陶製の壷や花瓶を飾っているインテリアをよく見かけますが、地震が発生した際には、それらが落下してくると考えてください。特によく人がいる場所付近で、高い位置に落ちやすいモノがないかチェックし、必要に応じて排除・移動しましょう。

POINT 割れたガラスで大ケガ!?飛散防止フィルムで防ぐ

窓、ガラス扉の食器棚、飾り棚、額縁のガラス板など、室内を少し見回しただけでも、ガラスを使用している家具やモノが多いことに気付かされます。地震が発生した場合に、暗闇の中で割れたガラスで大ケガというケースも少なくありません。身の回りのガラス板などのガラス製品には、飛散防止(兼防犯)フィルムを貼っておきましょう。

POINT 身近なモノで身を守る!インテリア素材を見直す

リビングや寝室など、部屋のあちこちにクッションや座布団などを配置しておくと、とっさのときに頭を守ったり、床に飛び散ったガラスの上に敷いたり、二次被害防止に役立ちます。すぐ手に取れる身近なモノが、どういう風に防災に役立つのか、家族で話し合ったりお子さんに教えたりしておくとよいですね。

写真立てのフレームをガラスから革製に、ガラスのシャンデリアを和紙の照明になど、インテリアの素材を安全なものに見直しましょう。また、リビングや寝室など、部屋のあちこちにクッションや座布団などを配置しておくと、とっさのときに頭を守ったり、床に飛び散ったガラスの上に敷いたり、二次被害防止に役立ちます。身近なモノがどう防災に役立つのか、家族で話し合っておくとよいですね。

マンションの管理組合で取り組む、地震防災6つのポイント

マンションだから災害時にも誰かが助けてくれるとお考えの方も多いかもしれません。しかし、日頃からしっかりとしたコミュニティ組織が確立されていなくては、一刻を争う事態に対処することはできません。ふだんから管理組合で、救助や消火体制を話し合っておくことが重要です。

POINT マンションの耐震性や非常用設備を知る

災害発生時に重要なことは、居住者の生命を確保・維持することです。そのためにはマンションの耐震性や非常用設備を調べ、避難経路や生活機能を保持するための設備に問題がないかを確認しましょう。大規模改修工事の際に、高耐震性の設備に入れ替えることも一案です。

POINT 災害対策本部を作る

大きな地震が発生したとき、初動体制はその後の被害に大きく影響します。被害を軽減するために、平時より災害対策本部を組織し、居住者それぞれの役割や責任を明確にしておきましょう。「理事も被災する」「外部からは助けに来ない」という覚悟が必要です。

POINT 居住者名簿を作る

各住戸の使用状況、家族構成、緊急連絡先などを記した名簿は、要援護者の把握と支援、閉じ込め者の救出、居住者の安否確認などに役立ちます。マンションの管理規約が標準管理規約に準拠していれば、居住者名簿は個人情報保護法に適用されません。

POINT 地震防災マニュアルを作る

万が一の地震災害を想定し、個人やマンションの一員としてすべきこと、避難方法、備蓄品の保管場所や配付方法、さらに地域特有のハザードマップや関係機関の連絡先などをマニュアル化し、居住者全員で情報共有しておきましょう。

POINT 防災訓練や防災セミナーを企画する

居住者に積極的に参加してもらうためには、専門家のアドバイスを受けたり、居住者アンケートを行ったりして、防災意識度に見合った企画を実施しましょう。訓練やセミナー開催時には、必ずアンケートをとり、ニーズを反映させていくことで一層充実した企画になるはずです。

POINT 防災備蓄品を揃える

居住者の救出、応急手当、消火活動といった一刻を争う事態には、居住者の力が不可欠です。対応に必要な防災備蓄品は、保管場所を居住者に周知し、使用方法の確認や管理を定期的に行いましょう。また、防災予算の確保には自治体の補助金制度を確認するとよいでしょう。

自立した防災とマンションでの共助を目指して

マンションには、大勢の人が集まって住む「集住」のメリットがあります。良好な居住環境や駐車場・インターネットなどの生活サービスを皆で共有しているように、防災もまた、皆で共有して堅固な備えを構築することができます。家庭や管理組合でできることを実践し、ふだんからの備蓄や、災害時の救助活動を迅速に行うことで、自分たちのマンションを自分たちで守ることができるのです。

ただし、その根本は、居住者ひとりひとりの被害を減らす「自立した防災」です。管理組合で食料や防災用具を備えているから自分では何もしなくても大丈夫、といったように、防災意識をはき違えてはいけません。マンションで備えている数量はたいてい1日~3日程度ですから、停電・断水・ガスの遮断が長引く大規模災害では到底足りません。まず、自分と自分の家族の命をしっかりと守るために、室内の安全を確保すること、避難生活に必要な物資を十分に備えておくことが、「自立した防災」です。自分と家族が大丈夫であれば、次に他者の安全を考えることもできます。それが「共助」です。「自立」と「共助」は、マンションの防災に欠かせないキーワードです。家族で災害を切り抜けて、命をつなぐために、日頃から高い防災意識でのぞんでくださることを願っております。

  • 本ページ内に掲載の情報は2016年3月時点のものです。