気持ちのいい暮らしのつくりかた
若い頃はあまり美味しいとも感じず、興味をもつこともなかった干し柿。
歳を重ねるとともにその存在が気になりはじめ、今では滋味深い味わいの虜に。
思い切って作ってみると、驚くほど簡単でした。この秋、みなさんも手作りしてみませんか?
栄養豊富な柿。干すとさらにパワーアップ!
「柿が赤くなれば医者が青くなる」と言われるほど栄養価の高い柿。ポリフェノールの一種で渋み成分でもあるタンニンが多く含まれ、抗酸化や消臭効果、抗菌、抗ウイルス作用があると言われています。さらに干し柿は生の柿に比べるとビタミンCは減るものの、ビタミンAと食物繊維、脂質が増えるため、美肌効果や便秘解消の働きもあるそうです。ただし、カロリーや糖質は干すと高くなるので、食べるのは1日1〜2個が目安です。
甘柿ではなく、渋柿で作るワケ
柿には甘柿と渋柿がありますが、干し柿に使うのは渋柿です。甘柿は干している間に腐ったりカビたりしやすく、甘いので鳥に狙われることも多いのだとか。また、甘柿よりも渋柿のほうが糖度が高いそうなんです。渋くて食べられない柿が、干すことで渋みが甘みに変わり甘柿よりも甘くなるなんて、不思議ですね。
私が干し柿を初めて作ったのは3年前。何年も作り続けている友人に直接教わったのですが、皮をむく作業に時間がかかるくらいで拍子抜けするほど簡単でした。日に日に乾燥していく姿を見て楽しみ、窓辺に並んでいる景色にほっこり癒され、好みの仕上がりになった柿を美味しくいただく。このように完成するまでの過程を身近で堪能できるのが、干し柿作りの魅力のように思います。
作業に適した時期は、晩秋から初冬にかけて
【作り方】
①柿の皮をむく。
②ひもの両端をそれぞれ柿に結びつける。
③カビが生えないよう、結んだ柿を熱湯に10秒ほどくぐらせて殺菌。
④雨や夜露が当たらない風通しの良い場所に、柿同士が触れないように干す。
干し柿用の渋柿は枝をT字に残して収穫してあることが多く、ひもはそこに結びつけます。が、昨年私が入手した柿には枝がなかった(涙)ため、ネットで「柿クリップ」(写真上の右手前のもの)を購入。これでヘタを挟めば、難なく結びつけられます。
気温が高いとカビが生えやすいので、作業は晩秋から初冬にかけての気温が低く、空気も乾燥している頃がいいそうです。地域によって適した時期は若干異なると思いますが、東京に住む私は11月に入ったら着手しています。写真下のように軒下に吊るし、夜もそのまま。カビが生えていないかチェックしつつ、雨の日は室内に移動させるくらいで基本的には放置です。
手作りだから、自分好みの干し柿ができる
干している場所や地域、気象条件、柿の大きさなどにもよりますが、2〜3週間で外はシワシワ、中はトロトロの状態になるはずです。どのタイミングで食べるかは、お好みで。私は柿のすべての状態を楽しみたいので、トロトロ→しっとり→硬め、と収穫時期をずらして食べています。トロトロがお好みの場合は早めにすべてをひもから外し、乾燥を防ぐためにひとつずつラップに包み、密封できる袋や容器に入れて冷凍すればOK。半年から1年冷凍保存できるそうです。長期保存したい場合は中までしっかり乾燥させると、常温でも日持ちしやすくなります。
そのまま食べることが多い干し柿ですが、私はクリームチーズと一緒に食べるのも好きです。クルミをプラスしても美味。干し柿を刻んでヨーグルトに入れたり、パン生地に混ぜ込んだり、ドライフルーツとして活用もできます。冬場の保存食として重宝しますよ。
撮影・文/石野祐子(Forest inc.)
フリーランスエディター・ライター。家事セラピストユニット「いえはな」主宰。海外ウエディング誌、女性情報誌、ファッション誌、インテリア誌などの編集を経てフリーに。料理やインテリア、育児、健康など、女性の暮らしにまつわるジャンルにて執筆。また、文筆家&生活哲学家・辰巳渚主宰の『家事塾』にて学び、1級家事セラピストの資格を取得。2016年より自宅教室「いえはな」を主宰し、すっきり暮らす片づけの考え方や、日々の家事をラクに気持ちよく回すための秘訣を伝えている。