Brillia くらしのコラム

気持ちのいい暮らしのつくりかた

寒くなってきて、夜を家で過ごす時間が増えてきました。
ゆったりくつろげるインテリアのポイントとなるのは、じつは家の明かり、照明なんです。
今月は普段あまり気にすることのないインテリア照明について、少し考えてみましょう。

欧米に比べて日本の夜は明るすぎる

インテリア誌の編集部にいた頃、「照明使いのコツ」という企画を担当したことがあります。海外生活の長いアンティークショップのオーナーさんにインタビューしたのですが、その時の話がとても印象的でした。
まず、「日本の夜は明るすぎる」とのこと。コンビニの照明に象徴されるように、夜でも昼間のように明るい日本と比べ、欧米の夜の街はとても暗いそうです。これは海外旅行などでも感じたことがありますよね。住宅も同じで、天井にある1灯で隅々まで照らす日本と違い、欧米は天井に照明があることは稀で、部屋のあちこちに照明を配し、必要な時に必要な明かりを灯す「多灯使い」がほとんど。このため部屋の中は薄暗くムーディで、「暗がりを楽しむ文化」が根づいている...といったお話でした。言われてみると、日本でもホテルや高級レストランは照明が暗めですね。照明は明るく照らすためのものだと思っていたのですが、取材で意識が変わりました。

くつろぐためには適度な暗さが必要

日本の照明が明るすぎるのは、戦後の高度経済成長期に「明るい=豊か」という認識で蛍光灯が普及したからなんだそうです。また、少しでも暗い場所で勉強や読書をすると目が悪くなる、と言われていたことも一因のようです(実際はそんなことはないそうです)。日本人は夜でもリビングで勉強したり何かしら作業をしたりと、くつろいで過ごすというよりは昼と同じように動いていることが多いですよね。いっぽうで欧米の人にとって、夜の家は昼間の疲れを癒し、家族とリラックスして過ごす場所。そのために必要なのは適度な暗さであって、日中のオフィスと同じような明るさではないのです。
夜の強い明かりで覚醒してしまい、不眠につながることも多いと聞きます。朝にお日様が昇って明るくなり、夕方に沈んでだんだん暗くなり、夜は暗闇へ...と変化するように、照明も自然のリズムを意識して調節したほうが、体内時計も整い、心にも体にもよさそうです。

照明の「色」で、くつろぎ感を演出できる

ところで、照明には色があるということをご存知ですか? 同じ蛍光灯やLEDでも色の種類が選べます。一般的にお店に売っているのは、青みのあるスッキリした色(昼光色)、最も太陽光に近い爽やかな白色(昼白色)、暖色系のあたたかみのある色(電球色)の3種です。青みがかった昼光色は細かい文字も見やすいので勉強部屋やオフィスに、自然な明るさの昼白色はキッチンや洗面スペースに、あたたかみのある電球色は寝室などのリラックスしたいスペースに向いており、部屋での過ごし方や求める雰囲気に合わせて選べます。
ゆったりくつろいだ雰囲気をつくり出すのにおすすめの色は、やはり電球色です。シーリングライトやペンダントライトなど、天井にある照明を電球色に変えるだけでも、驚くほど部屋の印象が変わりますよ。ぜひ試してみてください。

照明を追加すれば、部屋の表情も豊かになる

天井からの照明が部屋にひとつあれば明るさはじゅうぶんです。そして電球色に変えることで雰囲気もよくなります。さらにくつろげる部屋にしたいのなら、欧米の多灯使いを真似して、照らしたい場所や目的に合わせて照明を追加しましょう。本を読むソファの横に手元を照らすフロアライトを、文字を書く机にはテーブルライトを、といった具合です。複数の照明をあちこちで使うことで空間に陰影が生まれ、奥行きも演出できます。そして、この明かりの明暗こそがくつろぎにつながるのです。
我が家もソファ脇にフロアライトを置いたり、ピアノ前の壁面にライトを設置したりしていますが、必要な場所に必要な明かりがあれば全体を明るくしなくても不都合は感じません。暗さとともに過ごす夜は自然と気分も落ち着きますし、昼とは違うインテリアの表情も楽しめます。せっかくの夜長の季節、家族でリラックスして過ごせる空間を照明でつくってみてはいかがでしょう。

撮影・文/石野祐子(Forest inc.

フリーランスエディター・ライター。家事セラピストユニット「いえはな」主宰。海外ウエディング誌、女性情報誌、ファッション誌、インテリア誌などの編集を経てフリーに。料理やインテリア、育児、健康など、女性の暮らしにまつわるジャンルにて執筆。また、文筆家&生活哲学家・辰巳渚主宰の『家事塾』にて学び、1級家事セラピストの資格を取得。2016年より自宅教室「いえはな」を主宰し、すっきり暮らす片づけの考え方や、日々の家事をラクに気持ちよく回すための秘訣を伝えている。

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