Brillia くらしのコラム

気持ちのいい暮らしのつくりかた

今を充実させるために、不用品を手放す

仕事と子育てに疲れ、先の人生がまったく見えなかった時期があります。
そんな不安から私を救ってくれたのが、これからご紹介する「人生十二相」という考え方です。
この概念を知っておくと、よりラクに、身軽に生きられるような気がします。

多くの人がイメージする「人の一生」とは?

いきなりですが、「人の一生」ってどんなイメージですか? 長く続く一本道、高い山を登って下っていくようなイメージ、ではないでしょうか。
何も持たずに生まれてスタートし、子どもの時期というステージを迎え、中学、高校、大学受験などのステップをクリアして次のステージに行く。就活して婚活して結婚をクリアすれば、結婚しない人よりも上のステージに進み、出産すればさらに上のステージに。そうして家族、収入、家などを手に入れ、さまざまな達成感を得て人生のピークを迎え、その後は「よくここまで頑張った」と自分に満足しながら、「ここまでしか登れなかった」と悔やみながら、老いのステップを下っていく。
私もこのようなイメージを長らくもっていました。ステップアップとたゆみない努力と、そしてどこまで上のステージにたどり着けたかで、自分の人生の価値が決まる。人生って厳しいなぁ...と。

人生は小さな「12の人生」でできている

このコラムのトップにあるイラストを見てください。これは生活哲学家・辰巳渚さんの『人生十二相』(イースト•プレス、2013年)という本に載っている、人生を12のフェーズ(相)で捉えた図です。簡単に説明すると、一生というのはひと連なりのものではなく、12の小さな人生でできている。それぞれの小さな人生を生き終えて、次の新しい人生へ移っていく、というものです。
例えば、就職や結婚を節目に「自立」のフェーズにひょいっと移る。子どもが生まれたら「子育て」のフェーズに移り、「子育てをするフェーズを生きる私」に生まれ変わる。移った後は、それぞれのフェーズをしばらく生きる。この「移る」というのは、今いる場所の周りにふわふわと浮いている島に、えいやっと飛び移るような感覚、あるいは位相が変わる感じというのが、分かりやすいかもしれません。

新しい視点で人生を捉え直してみよう

人生の節目を迎えるごとに、人はそれまでの人生をいったん終えて、新しい人生へと生まれ変わる。そうやって小さないくつもの人生を生きながら、長い目で見れば「一生」を終わらせていく。このように人生を捉え直してみると、少しラクに生きられるような気がしませんか?
12のフェーズをすべて経験することが「正解の人生」というわけではありません。これは「だいたいこういう感じ」という見取り図です。でも、「だいたいこういう感じ」を知っておくと、なんとなく安心ですよね。図の最下段にある「関わるコト•モノの量」が圧倒的に多く、誰もがエンドレスに感じる子育て期も、そのうち終わりを迎えて次のフェーズに移る日が必ず来るのです。

どれだけモノを手放せるかで生きやすくなる

新しい人生をスタートさせるのに必要な作業が、身の回りのモノの見直しです。赤ちゃんが生まれたから角のある夫婦仕様のテーブルはいったん片づけ、安全なモノに買い替える、といったように、前の人生では必要だったけれど次の人生に必要ないモノは、きっぱり手放し、片づける。そして次の人生でも必要なモノは残していく。このように「片づけ」作業をすることで、軽やかに節目を乗り越え、新しい人生の軸や土台ができあがるのです。
節目ごとに小さな片づけを繰り返しておけば、「生前整理」という、歳がいってから一生分のモノの整理をしなくてはならないプレッシャーもなくなります。あなたの身の回りのモノは、今の人生に見合ったモノ、必要な量でしょうか? どれだけたくさんのモノを一生で得られるか、ではなく、節目節目でどれだけ手放せるかで生きやすくなります。目の前の人生を充実させるためにも、一度見直してみてはいかがでしょうか。

撮影・文/石野祐子(Forest inc.

フリーランスエディター・ライター。家事セラピストユニット「いえはな」主宰。海外ウエディング誌、女性情報誌、ファッション誌、インテリア誌などの編集を経てフリーに。料理やインテリア、育児、健康など、女性の暮らしにまつわるジャンルにて執筆。また、文筆家&生活哲学家・辰巳渚主宰の『家事塾』にて学び、1級家事セラピストの資格を取得。2016年より自宅教室「いえはな」を主宰し、すっきり暮らす片づけの考え方や、日々の家事をラクに気持ちよく回すための秘訣を伝えている。

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