Brillia 防災コラム

【防災コラム】レスキューナースが教える災害を生きぬくヒント

被災して元の生活に戻るためにも大事なのは食事!

2022年1月22日に日向灘を震源とした地震が起きました。
久々の地震で、自分の防災対策を考えた方がたくさんおられたようです。
災害が起きても、私たちは生きていかねばなりません。
被災時でも美味しくて豊かな食事を摂るための備蓄と食べ方を具体的にお伝えします。

食料品が手に入らない世界を想像できますか?

大規模災害が起きるとライフラインが停止して不便な生活になります。公的な支援物資はすぐに届くとは限らない。スーパーやコンビニの店頭から食料品がなくなることも考えられます。そのために備蓄しておかないと食べることができなくなります。備蓄の必要性は分かっている。しかし何をどのくらい備蓄すればよいか、悩んでいる人もたくさんいます。被災時の食事として、あなたは準備していますか? 日本政府は、南海トラフ巨大地震や首都直下地震に備えて、国民に対して「最低3日間、推奨1週間」の水・食料等の備蓄等が望ましいと推奨。内閣府が発表した首都直下地震等による東京の被害想定によると、ライフラインの復旧目標日数は、電気6日、上水道30日、ガス55日。大規模災害が発生したら避難所の不足などで在宅避難もあり得ます。だからこそ災害専用の高価な缶詰、それも食べたことがないものより普段食べているものを備蓄しておいてください。

被災しても、いつものご飯を食べよう

私は「台風が来る」というニュースを見ても買い物に行きません。ライフラインが切れても何の心配もありません。食材は既に家にあり、調理する熱源も方法もある。なぜならライフラインが切れても対応できる調理を普段からしているためなのです。そして災害が起きた時には普段食べているご飯が食べられるだけで幸せになれるのです。その上、災害時は普段やってることしかできません。災害時はいつもと違い、かなりきつい状況です。だから私は普段食べてないものをわざわざ台風が来た時のために買いに行くなんてことはしません。カセットコンロで調理する、あるもので何か美味しい温かいものを作る。これは実は普段のお困りごとも解決できるのです。今日は体調が悪い、買い物に行けない、出かける気分にならない。そんな時にも家にあるものでカセットコンロでご飯を作る。これで解決。あなたもわざわざ買いに行くのはやめましょう。そして今日から災害時にもいつもと変わらず美味しいものを食べる設定に変えませんか?

私が普段からしていることが防災メシになる

私は災害用の備蓄ではなく、日常生活用の備蓄の定数を少し多めに設定しています。例えばお米。無洗米を常に20キロはストック。以前は普通の米でしたが、今は無洗米に替えました。お米を研ぐ水が確保できないからです。うどんやそばは乾麺だけではなく、冷凍うどん5個も併せてストック。パスタは食感や調理法のバリエーションを増やすためにマカロニ、サラダスパなどいろんな種類のものに。これだけで主食に大きなバリエーションがうまれ、普段から慌てません。副食は冷蔵庫にあるものは全てストック食材だと考えています。レトルト缶詰やフリーズドライなどは単体では使いません。調味料として考えて調理のアレンジを増やします。特にパスタソースは種類もいろいろあり、ふりかけタイプ、生フレークタイプ、レトルトソースタイプなど。パスタにかけるだけではなく、焼いたり蒸したりした野菜にかけたり、炊き込みご飯の素として使うこともあります。いかがです? これだけでも美味しいものができそうに思いませんか?

メスティンは炊飯だけではなく、普通に使えるクッキングツール

メスティンはアルミでできた長方形の飯盒です。最近は百均ショップでも売っています。実はこれ本当に使えるアイテムなのです。蒸す、焼く、炒める、揚げる、煮るが全て可能です。アルミでできているので熱伝導率が非常に高い。IHは不可ですが、他の熱源は可能。そしてお米を1合炊くのにちょうどいい大きさになっています。検索ワードでも「メスティンの自動炊飯」と言われるテクニックが流行っています。これは水加減をして、百均ショップで売っている固形燃料(25分燃えるもの)を使って加熱。火が消えるまで放置。10分ほど蒸せばおいしいご飯が出来上がり。炊飯器や土鍋で炊くよりも美味しいと大評判です。ただ白米を炊くだけではなく、私はよく鯖の水煮缶を加え、醤油・みりん・酒・生姜を入れて炊きます。本当においしい鯖炊き込みご飯が出来上がり。他にもやきとりの缶詰を加えたり、グリーンカレーの缶詰を入れたりしていろんなバリエーションを楽しんでいます。

カレー、チーズフォンデュ、水炊きもできる

メスティンでの調理に慣れるためにご飯以外に、カレーやチーズフォンデュ、水炊きなども作ってみましょう。カレーは、具材は切って炒めずに入れます。水はメスティンの3/4程度、カレールゥも入れて蓋をして煮込むのがポイント。チーズフォンデュは、にんじん、じゃがいも、ブロッコリーなどの野菜を適当な大きさにカット。メスティンの幅2/3に詰めます。耐熱容器にチーズと牛乳(大人はワイン)、すりおろしニンニクを加えてメスティンに入れます。蓋をして10分蒸す。これで出来上がり! 冷凍のパック野菜にしたら、ほとんど手を加えなくても用意できます。水炊きは、白菜やしめじ、椎茸、ネギなどを適当に入れます。お好みの肉や冷凍焼売や餃子、ウインナーなども加えて水を2/3入れます。これで火にかけたら水炊きの完成です。こうやってみたら簡単に調理できると思いませんか? やり始めたらあまりに楽に美味しくできるので、元の調理の仕方には戻れないかもしれません(笑)。

災害時にはキャンプ用品が大活躍

我が家では、キャンプ用の調理器具のホットサンドメーカーやスキレット、シェラカップやクッカーなどを普段の調理に使っています。何よりも耐久性が高くそして熱伝導率が良い。スタッキングができて収納するのにもコンパクトに収まります。ホットサンドメーカーで、餃子や小籠包を焼くと短時間でとても美味しく出来上がり。分厚い鶏もも肉もホットサンドメーカーならば短時間でとてもジューシーに焼き上がります。最近、インスタントラーメンがちょうどシンデレラフィットするのを発見。少量の水を加えて蒸してインスタント麺を戻すとモチモチの美味しい中華麺になりました。これで焼きそばを作ると本当に美味しい。このように、従来の食べ方ではないアレンジした食べ方を知っておくことも実は防災につながります。少ない素材でアレンジしたらたくさんの料理方法が可能になります。これを普段からやっておくことでいざという時にも普通にできるのです。

辻 直美(国際災害レスキューナース)

一般社団法人育母塾 代表理事
国境なき医師団の活動で上海に赴任し、医療支援を実施。帰国後、看護師として活動中に阪神・淡路大震災を経験。実家が全壊したのを機に災害医療に目覚め、JMTDR(国際緊急援助隊医療チーム)にて救命救急災害レスキューナースとして活動。
現在はフリーランスのナースとして国内での講演と防災教育をメインに行い、要請があれば被災地で活動を行っている。
著書に『レスキューナースが教える プチプラ防災』『レスキューナースが教える 新型コロナ×防災マニュアル』(ともに扶桑社刊)がある。

※掲載の情報は、2022年2月現在の情報です。
※コラムの内容に関する解釈は、筆者の経験に基づく見解であり、公式な情報ではないことも含まれます。

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