Brillia 防災コラム

【防災コラム】レスキューナースが教える災害を生きぬくヒント

防災備品のローリングストック

災害が起きたときに、必須なのは水と食料、そして排泄グッズ。しかしわざわざそれをいつ来るかわからない災害時のために置いておくのは、非常に面倒でかつコストがかかる。今の災害備蓄は「ローリングストック」が主流に。普段から少し多めに食材、加工品を買っておき、使ったら使った分だけ新しく買い足していく方法です。具体的にはどうするのかを紹介しましょう。

普段の買い物はどうしていますか?

皆さんは食料をどのようにして買っていますか? 定数を決めて使ったら補うように買う。その時に自分が欲しいものを気分によって買う。いろんな方法があります。以前の私は気分で買っていました。当時は家の在庫にはムラがありました。買ったのを忘れて、賞味期限が切れていることも。防災に目覚めてからはローリングストックをしています。防災用と日常用は分けることなく、全体的に少し多めに買って使い回しています。普通の備蓄は、長期保存が効くなど「備蓄用」としていざという時のために手をつけずに保管しておくことです。ローリングストックは日常生活で消費する食材などを、ある程度多めに家に備蓄して古い方から順に使っていくという方法です。例えば、1週間分の食材を常に家に備蓄しておいて、古い方から食べていき、食べて減った分を新たに買って補充します。この方法なら常に1週間分の食材は確保できて災害にも対応できます。うっかりして賞味期限が切れてしまうということも起こりません。

防災のための備蓄という考え方をやめる

防災備蓄は頭では分かっていてもなかなか行動に移せないものです。それは備蓄が役立つような災害はめったに発生しないから。
めったに発生しない→そのため「だけ」に備蓄するのは面倒、費用も惜しい→備蓄なんてしなくていいか…となってしまいがち。ローリングストックであればこのようなことにはなりません。日頃の生活で使うものを少し多めに備蓄するだけ。習慣にしておけば自然に防災に役立つことになるのです。また、乾パンやアルファー米や缶詰など災害用の食品は割高で、食べ慣れていない味です。災害時に普段から食べ慣れている味は安心に繋がります。災害が起きて心身ともに辟易しているとき、非日常的な食べ物ではなく、普段食べているものを食べられるようにすれば、元気になります。普段から備蓄品を使ったいろいろな調理法を試しておくこともおすすめします。

ローリングストックは難しい?

ローリングストックを実践しようとしたけど、難しくてやめてしまった人は意外に多い。難しくしてしまう原因は、主に2つあります。
【その1】うまく収納できずに混乱してしまうパターン。対策は「箱単位の管理」。備蓄用の収納箱を作って管理しましょう。
【その2】あまりにも多くの種類のものをローリングストックしようとして面倒になってしまうパターン。対策にはあれもこれもと欲張らない。「1週間、健康に生きていくために自分にとってどうしても必要なものは何か」と考え、ストックするものを厳選する。備蓄をなるべく少なくすることで、「混乱」や「面倒くささ」を回避します。いつか使うんじゃないかって思う方は多くいます。モノにはローリングするものと、使う頻度が少ない備蓄があります。そこを間違えると管理できなくなることも。自分が何をよく使うのか、災害時に何が必要かを把握しましょう。

ローリングストックのメリットとデメリット

備蓄には、ローリングストックに向いているものと通常の備蓄に向いているものがあります。
【3つのメリット】
1.日常生活の延長で実践できる
日常生活で消費している食材などを、いつも買っていた量より少し多めに購入しておくだけでOK。普通の備蓄に比べて気軽に実践できる。
2.忘れにくい
備蓄の更新を忘れてしまって、賞味期限切れ、消費期限切れ、古くて使えなくなっていたということも起こりにくい。
3.収納場所の節約にもなる
日常的に使っているものを少し多めに確保しておくだけ。収納場所も「備蓄専用」に比べると節約できる。
【2つのデメリット】
1.欲張ると混乱しやすい
あれこれローリングストックすると混乱してしまう恐れがあります。
2.ローリングストックだけでは万全ではない
全ての物がローリングストックに向いているというわけではない。「非常時にしか使わないようなもの」はローリングストックはできません。そういうものはローリングストックではなく、普通に備蓄します。

ローリングストック=非常食や保存食は間違いのもと

【理由その1:備蓄するのは食品だけではありません】
ローリングストック=非常食や保存食とすると、食品だけを備蓄すればいいと考えがち。備蓄は食品だけではなく、生活備品も必要です。トイレットペーパーやティッシュ、ゴミ袋などの生活備品は見落としがちです。
備蓄するのは食品だけと決めつけていると災害などいざという時に困ります。
【理由その2:備蓄するのは保存用ではなくいつも使うもの】
基本は「日常的に使うものを少し多く備蓄する」。非常食を多く確保していると、賞味期限に合わせて「日常的に非常食を消費する」ことになります。そういう非常時に特化した食品は通常より高価で、味付けが口に合うかわかりません。日常的に食べなれているものを備蓄しましょう。

備蓄量の目安はどれぐらい?

備蓄の量はその人の生活の中で「何を大事にしているか」によって大きく変わります。例えば普段からお米を食べない人は、そんなに備蓄としてお米が必要になりません。あなたが生活する中で一番大事にしたいこと、日常生活と変わらず送るためには何が必要なのかを考えてみてください。コロナ禍ではあらゆるマンパワーも足りません。また、被害の大きさを考えるとインフラの復旧は1週間以上かかることもあるでしょう。最低3日分、大きな災害の危険度が高いところでは1週間分を備蓄することが推奨されています。1日分の量は各家庭によって何をどれくらい消費するかが違います。余裕を持って生活するためには少なくとも10日以上の備蓄は考えた方が良いと思われます。【東京備蓄ナビ】というサイトではその家庭に必要な備蓄の量のリストを作ってくれます。一度試してみてください。

辻 直美(国際災害レスキューナース)

一般社団法人育母塾 代表理事
国境なき医師団の活動で上海に赴任し、医療支援を実施。帰国後、看護師として活動中に阪神・淡路大震災を経験。実家が全壊したのを機に災害医療に目覚め、JMTDR(国際緊急援助隊医療チーム)にて救命救急災害レスキューナースとして活動。
現在はフリーランスのナースとして国内での講演と防災教育をメインに行い、要請があれば被災地で活動を行っている。
著書に『レスキューナースが教える プチプラ防災』『レスキューナースが教える 新型コロナ×防災マニュアル』(ともに扶桑社刊)がある。

※掲載の情報は、2021年7月現在の情報です。
※コラムの内容に関する解釈は、筆者の経験に基づく見解であり、公式な情報ではないことも含まれます。

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