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【防災コラム】レスキューナースが教える災害を生きぬくヒント

水害が起きた時、命を守る行動とは?

近年、気象状況は10年前とは明らかに変わってきています。豪雨、猛暑、雨が降れば川の氾濫や土砂災害、台風が季節はずれや今までと全く違う経路で日本にやってきたり。水害が非常に身近な災害となっています。その時に言われる命を守る行動について詳しく知っておきましょう。

水害対策に重要なのは「意識と知識」。

水害は他の災害と違って、唯一、前もって予測できます。そして避難や減災対策への準備をすることができます。そのためには平時から水害を“意識”し、準備を怠らないこと。慌てていると、頭はパニック、体は固まって思うように動かないものです。だからこそ普段から災害を意識して情報収集をすることがポイントです。何も難しいこと事はありません、まずは自分の家の周りを歩いて見てみましょう。こんなところに側溝がある。この道は細いから逃げにくいなぁ。ここは坂道だから水が流れてくる場所だな。という気づきが大事!
慣れたら、その気づきから、今より3歩先のことまで考えてみましょう。
気象・防災情報の見方や避難経路・方法を事前に知っていると、非常時も慌てず最良の選択ができます。家の浸水対策ももちろん重要ですが、まずは家族の安全が一番。いざという時に最良の選択ができるよう、日頃から家族全員で「意識と知識」を高め合っておきましょう。


近年増えている水害は唯一予測できることが多い災害です


川が氾濫すると浸水は予想以上の速さで起きる

洪水、浸水、大雨からの川の氾濫、そしてそれ以外もある

川の水があふれなくても街中に水が氾濫することもあります。水害とは簡単にいうと、水が多くなりすぎて、あふれて氾濫(はんらん)して起こる災害のことです。例えば洪水、浸水、冠水、土石流、土砂崩れ、山崩れ、崖崩れなどです。
水害は水災とも言います。つい、水の氾濫は川にばかりに目が行きがちです。川の水が堤防を越えたり、堤防を壊したりして氾濫する外水氾濫(別名:洪水氾濫)の他に、雨水などを川や下水道に排水できずに氾濫する内水氾濫があります。最近はゲリラ豪雨によりマンホールから水があふれていたり吹き出していたりするのを見たことがあると思います。あれは顕著な内水氾濫と言えるでしょう。東京や大阪、愛知など地下の開発が進んでいる都市部では、実は外水氾濫よりも内水氾濫による被害が深刻になっています。内水氾濫は、都市型水害とも呼ばれています。

水害に対する情報収集をしておこう

一般的に水害についての情報はハザードマップに掲載されています。自分が住んでいるエリアはどんな被害に遭う可能性があるのか、避難所はどこにあるのか、浸水しやすい場所はどこなのか、など細かく掲載されています。しかし前もって知っておきたいのはもっと具体的な情報です。一番わかりやすいのはSNSでしょう。ハッシュタグをうまく使って、自分が住んでいるエリアの過去の被災の状況は写真などを見ればイメージしやすいでしょう。また被災された方がどのようにして復興していったのかを見ることもできます。平時から信頼できるアカウントをフォローしておくことも大事です。自治体や消防、警察、自衛隊、医療などもチェックしておきましょう。また個人の場合はその人が何をしていて、どんな活動をしているのか、顔出ししている、所属が明らかか、なども見極めるポイントになります。


川の氾濫だけではなく、下水処理が追いつかなくて起きる水害もある


浸水の高さをハザードマップで前もって調べておく

その土地ならではの水害を事前に知っておく

水害は主に5つの原因で起こります
①台風、集中豪雨などの天候
②高潮による氾濫
③河川流域や低地といったもともとの地形
④治水や排水の不備
⑤人工的に作り変えられた土地

内水氾濫は、土の地面が多い地域では雨が降っても地面に浸透するため起きにくく、コンクリート・アスファルトの部分が多い市街地では、雨水を吸収しないため、起きやすいと言われます。特に近年は都市化が進んでいるため、以前に比べて水害のリスクが高まっています。各地域によって、水害の原因や起きやすさ、備え方が変わってきました。そこで、自分の住む地域の情報に関心を持つことがとても大切になってきます。
中央防災会議「災害時の避難に関する専門調査会」第6回資料は以下のデータを発表しています。1.避難行動を行わずに被災する人が多い。2.避難中、避難先での被災もある(豪雨災害の犠牲者の約1割は、避難中の被災、避難先での被災 だった) 。つまり水害であっても自宅や会社以外の場所で被災するシチュエーションも今後は想定に入れておいてほしいと思います)。

待っているだけでは助からない

水害対策として、国や地方自治体は河川改修や治水施設の整備等の取り組みを行っています。しかし工事には莫大な費用とともに長い年月が必要です。
そこで重要なのが、行政の取り組みの「公助」だけでなく、地域コミュニティによる取り組みの「共助」との連携。
地域の取り組みとしては、土嚢を積み上げて堤防を補強したり、近隣の人たちに注意を呼びかけ、避難を誘導したりすることがあります。地域住民で構成される「水防(消防)団」が活躍している地域も少なくありません。※水防(消防)団は、大雨や台風等の水害から地域を守るために、住民が団員として水防活動を行う組織です(一部の地域では消防団が水防活動を行っています)。
そして何よりも水害の被害を最小限に抑えるには、個人の取り組みも必要不可欠です。水害ハザードマップの活用、場所によっては土嚢や水嚢の準備。
ガラス飛散防止フィルムの貼り付けや車の移動、そして非常時の持ち出し品の用意をします。


共助はお互いが連携して行う


このように地面を確認して歩く

水害から命を守るためにするべきこと

①垂直避難か水平避難かを決める。②マイタイムラインを作り家族で共有しておく。③ハザードマップを確認し自分が逃げる場所をあらかじめ決めておく。 ④避難の際には長袖、長ズボン、スニーカーで棒状のものを持ち地面を確認しながら歩く。⑤道の真ん中を歩く。⑥あらかじめ避難のタイミング「避難スイッチ」を決めておく。
というように、水害対策は、あらかじめ知識をつけ、そして決めておくことがポイントとなります。特に逃げるタイミングは、遅くなりがちです。災害時には正常性バイアスが働き、自分は大丈夫と思いがち。また、今ある環境から変わりたくない気持ちから判断が鈍ります。しかし前もって自分は「このタイミング」で「ここに逃げる」と決めておけば行動しやすかったという人はたくさんいます。逃げた先での行動も含めて(特に食事や体力温存など)一度体験しておくとスムーズに行動が開始できます。頭だけのシミュレーションではいざという時には動けません。平時の時こそいろいろ体験をしておきましょう。

辻 直美(国際災害レスキューナース)

一般社団法人育母塾 代表理事
国境なき医師団の活動で上海に赴任し、医療支援を実施。帰国後、看護師として活動中に阪神・淡路大震災を経験。実家が全壊したのを機に災害医療に目覚め、JMTDR(国際緊急援助隊医療チーム)にて救命救急災害レスキューナースとして活動。
現在はフリーランスのナースとして国内での講演と防災教育をメインに行い、要請があれば被災地で活動を行っている。
著書に『レスキューナースが教える プチプラ防災』『レスキューナースが教える 新型コロナ×防災マニュアル』(ともに扶桑社刊)がある。

※掲載の情報は、2021年9月現在の情報です。
※コラムの内容に関する解釈は、筆者の経験に基づく見解であり、公式な情報ではないことも含まれます。

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