Brillia くらしのコラム

【防災コラム】レスキューナースが教える災害を生きぬくヒント

避難判断

災害が起きた場合、自分の身に危険が及んだ場合、避難する必要があります。しかし避難とは、避難判断とは実際にはいったいどういうものでしょうか? 今や日本ではあらゆる災害の可能性があり、いざというときには逃げる必要があります。今回はシチュエーションに合わせた判断の基準や避難先についてご紹介しましょう。

避難とは「難を避ける」、難がなければ逃げる必要はない

「避難」とは読んで字のごとく「難を避ける」ための行動です。
では、避けるべき「難」とは何でしょうか。私たちが洪水や地震で受ける難は、ライフラインの断絶です。それによって生活水準が著しく下がり、健康的な生活が失われてしまいます。しかしライフラインを補うような代用品があれば、大きく変わります。生活水準がある程度のラインで維持できれば、その場で生活することが可能です。他にも衣食住のレベルやメンタルヘルスなどが脅かされることも難なのです。それらを脅かすことがなければそんなに怖がることはないのです。
私たちは、災害そのものを全て「難」と見てしまいがち。しかし、もし洪水や地震があなたに何も困難をもたらさなかったら、それは難ではない。難がなければ避ける必要はありません。つまり、洪水や地震が「あなたに困難をもたらす可能性がある危機」であるとき、はじめて避難の必要があることになります。

避難は全員? 事前避難と発災後避難は全く意味が違う

どうしても「事前避難」しなければならない危険予想地域に住んでいる。この場合は一刻も早い避難が必要です。しかも、迅速かつ的確さが必要です。その避難は「津波や山・がけ崩れ」が過ぎ去ったあと、住宅が無事であれば、安全確認後は自宅に戻ることができます。地震が起きて実際に被災(例えば怪我をした、家族を失った、住む家を失ったなど)した人が、その後の生活上の困難を少しでも軽減するために行う「発災後の避難」は、「事前避難」とは別の状況下のものです。ここは区分けして考えてください。
また、「災害が起きたら全ての人が避難しなければならない」という意識、それは大きな誤解です。危険予想地域になく、耐震性や家具の転倒対策が十分に確保された住宅に住んでいる。その条件なら、地震があなたに「難」をもたらす可能性は少ないので、他の場所に避難する必要はありません。「自宅にいる」ことが「避難」と同じことともいえます。
そのためには、自分の家がどんな被災を受けるかを事前に調べておきましょう。

大雨や台風での判断基準は警戒レベル

大雨や台風などの水害は唯一予測ができる災害です。その時に逃げる判断になるのは警戒レベルです。これは災害発生の危険度と、とるべき避難行動を、住民が直感的に理解するための情報のことです。ではどの警戒レベルで行動すればいいのでしょうか? まず頭に入れておいてほしいのは警戒レベルは、災害発生の危険度が高くなるほど数字が大きくなるということ。一般的には「警戒レベル3」で危険な場所から高齢者等は避難、「警戒レベル4」で危険な場所から全員避難をしましょう。最大のポイントは「警戒レベル3」の発令です。高齢の方や障がいのある方など防災弱者やその支援者の方は危険な場所から避難し、それ以外の人は避難の準備をすること。そして「警戒レベル4」が発令されたら、対象となる地域住民の方々は危険な場所から全員避難することです。「警戒レベル5」は災害発生情報の発令です。警戒レベル4で逃げていない人に対しての呼びかけであり、ここで逃げるポイントにはなりません。日本では法的な観点から、避難命令という言葉は使えません。避難勧告が最大の警告になるのです。
※2021年5月の災害対策基本法改正により避難情報の警戒レベルの変更があります。警戒レベル4「避難勧告・避難指示」→「避難指示」、警戒レベル5「災害発生情報」→「緊急安全確保」

レベルに合わせた行動とは?

警戒レベル1
災害発生の危険性はまだ低い段階。最新の防災気象情報などをチェック。災害への心がまえを高めます。
警戒レベル2
「大雨注意報」や「洪水注意報」が発表され、災害発生に対する注意が高まってきた段階。ハザードマップで災害の危険性のある区域や避難場所、避難経路、避難のタイミングの再確認。避難に備え、自らの避難行動を確認します。
警戒レベル3
防災弱者や避難を支援する方は危険な場所から安全な場所へ避難。土砂災害の危険区域や氾濫が予想される河川沿いに住む方も、この段階で避難すること。それ以外の方もいつでも避難できるように準備。
警戒レベル4
「避難勧告」や「避難指示」が発令された段階。対象地域の方は全員速やかに危険な場所から避難する。避難先は、感染症や家族の状況を考え、避難所のほか、親戚・知人宅へ避難するなど「分散避難」を検討しましょう。
警戒レベル5
すでに災害が発生している状況。命を守る最善の行動をとる。
このレベルでは安全な避難が難しい場合がある。空振りをおそれずに、レベル3、レベル4の段階で安全・確実に危険な場所から避難を終えること。
※2021年5月の災害対策基本法改正により避難情報の警戒レベルの変更があります。警戒レベル4「避難勧告・避難指示」→「避難指示」、警戒レベル5「災害発生情報」→「緊急安全確保」

地震で避難、マンションの場合は火災がなければ自宅に留まる在宅避難が基本

地震発生時は、身の安全を最優先に行動。大きな揺れを感じていきなり外に飛び出るのは危険です。家の中でも物が少ない場所に移動。揺れが収まるまで様子をみます。揺れが収まったら火の元を確認です。転倒・落下した家具やガラスの破片に注意しながらドアや窓を開け、逃げ道の確保が大事。避難する前に、防災セットや非常用品を手元に準備。ラジオがある場合は、災害情報や避難情報をチェックします。マンションの場合は、火災がなければ自宅に留まる在宅避難が基本となります。なぜなら、マンション自体が耐震性と耐火性に優れているから。大きな揺れによってエレベーターが停止する可能性は高いです。エレベーター内に取り残される事態を防ぐためにも、地震発生後はできるだけ階段を使用します。地震で配管が損傷すると、自宅の水回りから汚水が漏れたり、逆流したりするケースも。そのため、配水管の確認ができるまでは、できるだけ水を流さない方が賢明です。


出典 ウェザーニュース

コロナを怖がらず正しい判断をする

第4波が起きつつある新型コロナウィルス感染症。この感染症が収束することは見込まれないと思います。そうなると皆さんの心配は、避難所で三密になり感染するリスクが高まるのではないかということ。その心配から自分が危険な状態になるかもしれないのに、避難所に行くことを拒否する方がいます。ハザードマップ上で水害の危険性がある家に住んでいる場合、迷わず避難。地震においても「難がある」場合は在宅避難にこだわらず、避難所に行きましょう。避難所では「感染症対策マニュアル」があり、感染対策が徹底されています。それは新型コロナウィルス感染症に対するものと全く同様です。三密対策として収容人数を減らし、消毒、換気などにも心がけています。なので避難してきた人たちが感染症対策をしていれば感染リスクはぐっと下がります。人は今いる環境から変わりたくないというのが本音。しかし災害時において一番大事なことは死なないことと怪我をしないこと。避難判断を間違えないようにしましょう。

辻 直美(国際災害レスキューナース)

一般社団法人育母塾 代表理事
国境なき医師団の活動で上海に赴任し、医療支援を実施。帰国後、看護師として活動中に阪神・淡路大震災を経験。実家が全壊したのを機に災害医療に目覚め、JMTDR(国際緊急援助隊医療チーム)にて救命救急災害レスキューナースとして活動。
現在はフリーランスのナースとして国内での講演と防災教育をメインに行い、要請があれば被災地で活動を行っている。
著書に『レスキューナースが教える プチプラ防災』『レスキューナースが教える 新型コロナ×防災マニュアル』(ともに扶桑社刊)がある。

※掲載の情報は、2021年4月現在の情報です。
※コラムの内容に関する解釈は、筆者の経験に基づく見解であり、公式な情報ではないことも含まれます。

このページの先頭へ戻る