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【防災コラム】レスキューナースが教える災害を生きぬくヒント

災害時に何よりも大事なのは水の確保と使い方

大規模地震や水害などでライフラインが寸断された時、真っ先に困るのが水の問題。被害が広範囲に及ぶと、各家庭に水が行き渡るようになるまでに日数が1週間、もしくはそれ以上かかってしまう場合があります。飲料水、食事の準備やトイレ、洗濯などあらゆる場面で欠かせない存在が水です。給水支援やライフライン復旧を待つだけではなく、水の使い方も含め備えておくことが必要です。

重要と言われるが、水は体の中ではどう使われているのか?

水が必要だと分かっていても、実際には何に使われているのかを改めて確認してみましょう。私たちの体の6~8割を占める水は、生命を維持する上でたくさんの重要な役割を担っています。栄養分の循環、老廃物の排泄などに水は使われています。この他にも呼吸や発汗により絶えず水分が失われていくため、水分補給を怠れば、あっという間に水分不足の状態に陥ります。 体内の水分不足は、様々なトラブルを引き起こす原因となり、悪化すると生命を脅かす恐れも。体重の約2%の水分が失われただけで、喉の乾きや食欲低下などが現れ、約6%まで及ぶと頭痛やめまいなどの症状に襲われます。さらに10%まで失われると筋肉の痙攣、意識障害、腎不全など重篤な状態に至る可能性があります。
極度の緊張状態が続く災害直後は、疲労やストレスの蓄積により誰もが体調を崩しやすくなっています。飲料水の備蓄が生命を維持する上で大変重要な要素になると言っても過言ではありません。

命を保つにはどれだけの水の量が必要なのか?

大人1人につき、1日3Lの水が必要と言われています(食べ物に含まれる水分も含む)。そのうち2Lが飲用食用水、1Lが生活用水です。生活用水とは洗濯、歯磨き、洗顔、洗髪、体を洗う、食事の後片付け等に使用する、掃除、トイレ(流す、温水洗浄便座)など多岐にわたります。私たちは毎日の生活に中で意外な量の水を使っています。先日かなり節水して生活した1日の水の量を測りました。なんと一人で264Lも使っていました。災害時に使える水は限られています。使い方も含めて、3L(飲用食用水2L+生活用水1L)×家族人数の水を備蓄しておかなければなりません。今は10日から14日分を備蓄するようにと言うのが当たり前になっています。長期間保存が可能な水が便利ですが、水道水をペットボトルに入れて保管する場合は、蓋をして2~3日を限度に入れ替えが必要です。いずれにせよ、水質を落とさないようしっかりと蓋をして直射日光の当たらない涼しい場所で保管します。

子供と高齢者の「脱水」に気をつけよう

地震などの災害後の避難生活では、特に子供と高齢者の脱水症状に注意しなければなりません。子供は汗や呼吸によって失われる水分比率が高い上、自覚が少なく、対応もおそくなりがちです。発見された時には、すでに重症となっていることも珍しくありません。加齢により体水分量が低下した高齢者も脱水になりやすいです。中には「トイレに行く回数を減らしたい」という理由で水分補給を控えているケースもしばしばです。コロナ禍ではマスクをつけるのが当たり前の生活になりました。すると水分が足りないのにマスクの蒸れによって自覚ができてないことが多くあります。またマスクをつけていると面倒くさくて水分補給の回数が減っている人も多いでしょう。脱水の症状としては、喉が渇く、皮膚の乾燥、目や口腔内の乾燥、頭痛、発熱、気分不良、症状が進むと痙攣や意識混濁などもあります。また、脱水から心筋梗塞や脳梗塞などを発症したり、エコノミークラス症候群にも気をつけましょう。「食欲がない」「なんとなく機嫌が悪い」などといった些細な兆候を見逃さず、高温多湿とならないよう環境に配慮しながら定期的な水分補給を促すことが大事です。

災害時の水の確保はどうする?

飲用や食用に使う水は、ペットボトルやウォーターサーバーボトルが最適です。生活用水は、必ずしも新鮮な水である必要はありません。東日本大震災では、避難所となった学校にあるプールの水を汲んだり、バケツにためた雨水を飲料水以外の用途に役立てていました。以前はお風呂の浴槽に水をためて使うように言われてきました。しかしお風呂そのものが清潔でなければ、あっという間に水が腐敗します。貯水は、キャンプ用の貯水タンクやウォータージャグを使いましょう。給水車から水をもらう場合は、ゴミ袋と段ボールを使って簡易の貯水タンクを作ることがオススメです。給水車は家のすぐ近くに来るとは限りません。停電したらエレベーターが使えないので、水を抱えて非常階段を使って家まで帰らなければなりません。その時にはリュックサックにゴミ袋を入れて水を確保します。背中に背負って運ぶのが安全でかつ楽に自宅に持って帰れます。

備蓄はわざわざするのではなくローリングストックで!

災害が起きたときのために使うものをわざわざ置いておく。それではお金もかかるし、何よりも備蓄する場所がないという問題が出てきます。地震などの災害時のために、普段食べているもの・飲んでいるものを多めに買い置きし、なくなったら新たに補充する備蓄方法を「ローリングストック法」といいます。消費期限が長いものをわざわざ準備することなく、うっかり消費期限切れといった失敗もありません。これならば、日常生活はもちろん、災害時も使えます。水だけではなくて食料も同じで「災害時に使うもの」から「日常の生活の中で使うもの」という意識に変えてください。わざわざ災害用に買い置きする備蓄ではなく、普段から使い回すと在庫の数も管理できて一石二鳥です。私は、500ml、1L、2Lと大きさを変えて、複数箇所に分散させて保管しています。ベッドの下やクローゼット、紙袋に入れてインテリアにしたりもしています。デッドスペースに置くと、インテリアを邪魔せず備蓄することが可能になります。

断水した時のために今からできることは?

大災害が起きれば、市内全域に整備されている「災害時給水所」で誰でも飲料水を得ることができます。どこで水がもらえるのかなどの情報を入手する必要があります。近くの災害時給水所は、スマートフォン無料アプリ「ロケスマ」や「全国避難所ガイド」、区役所等で配布されている「災害時給水マップ」などがあります。TwitterなどのSNSで情報収集することも可能です。自分が住む自治体、消防、自衛隊などをフォローしておきましょう。その土地に住む人たちの情報も有効だと思います。何よりも一番大事なのは水の使い方です。食器を洗わずに済むようにラップをつけて食べる。洗うときは重曹を使い少量の水で賄うようにする。普段から節水するようにしましょう。

辻 直美(国際災害レスキューナース)

一般社団法人育母塾 代表理事
国境なき医師団の活動で上海に赴任し、医療支援を実施。帰国後、看護師として活動中に阪神・淡路大震災を経験。実家が全壊したのを機に災害医療に目覚め、JMTDR(国際緊急援助隊医療チーム)にて救命救急災害レスキューナースとして活動。
現在はフリーランスのナースとして国内での講演と防災教育をメインに行い、要請があれば被災地で活動を行っている。
著書に『レスキューナースが教える プチプラ防災』『レスキューナースが教える 新型コロナ×防災マニュアル』(ともに扶桑社刊)がある。

※掲載の情報は、2021年6月現在の情報です。
※コラムの内容に関する解釈は、筆者の経験に基づく見解であり、公式な情報ではないことも含まれます。

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