Brillia くらしのコラム

【防災コラム】レスキューナースが教える災害を生きぬくヒント

普段持ち歩く備え

防災対策として、備えておきたいものを買って自宅に備えている人はたくさんいらっしゃると思います。しかし災害は必ずしも家にいる時に起こるわけではありません。出かけた先で被災する場合も考えて「普段持ち歩く備え」も大事です。いざ被災した時でも不安にならないためには、防災グッズの使い方を知っている事が大事です。被災者に聞いたホントに使える備えをご紹介します。

コンタクトや生理用品は、避難所にないことも

避難所には、その人に合った常備薬やコンタクトレンズなどはなく、生理用品などは用意されることがあっても限られています。
防災ポーチは外出時に被災した際、どこでも一晩程度、安全で衛生的に過ごせるだけの必需品を入れておく袋。災害が相次ぐ中、自分で身を守る道具として、防災の専門家らが携行を呼び掛けています。しかしまだ馴染みがないのが事実。いつものかばんに入れて、持ち歩いても負担にならない程度の大きさと重さにおさめるのがこつ。市販の化粧用ポーチなどを活用するケースが多く、中身がぬれないよう、表面がはっ水加工してあることが必須です。ポーチに入れる必需品とは何か。私は「命に関わるもの」と「衛生的なもの」に分け、2つのポーチを携帯しています。「命に関わるもの」には10日分の常備薬、1日使い切りタイプのコンタクトを3日分など。「衛生的なもの」にはアルコール消毒液、おしり拭きのミニパウチ、ナプキン、おりものシートなどを入れています。
慣れない場所でストレスを感じ、頭痛になることも。持病がない人も鎮痛剤や痒み止めを入れておくと意外に重宝します。


いざという時にすぐに役立つ防災ポーチ


防災ポーチの中身

非常時の備えは3段階

私は、非常時の備えは3段階(0次、1次、2次)に分けて準備することをすすめています。
0次の備えとは、外出先で被災した時のために、常に持参しておく備えのこと。私は防災ポーチを作ってまとめています。実際にこのポーチのおかげで、何度も助かりました。真冬に特急列車が人身事故で止まって、列車ホテルになった時は、このポーチの中の保温断熱アルミシートやアロマオイルなどを使って過ごしました。停電でトイレが使えなくなった際には、ペットシーツとレジ袋で緊急的にトイレを作って使ったこともあります。
1次の備えは災害が起きて、すぐに持ち出せる防災リュックのこと。これは家だけではなく職場にも置くことがおすすめです。
2次の備えは災害が起きてから数日間の対策のこと。非常食や、ライフライン対策、災害トイレなどです。

防災の準備をしていない人が大半という事実

先日、テレビで1000人にアンケートを取っていました。防災リュックを用意している人はなんと100人。ほとんどは「何を買ったらいいのかわからない」「お金がかかるから用意できない」と言います。わざわざその日のため、専門性が高い物を用意する。これを備えだと思っている方が多いのかもしれません。そして用意しているのに、結局使うことがないまま気がついたら"賞味期限が切れてしまった、だから廃棄する"という勿体無いことを繰り返してはいないでしょうか? 私は専門のものよりも【これでも代用できる】にポイントを置いて用意しています。常に使っては、買い足すの繰り返しです。困った時にすぐに使えるものが備えなのです。特に防災ポーチには私のスタメンを揃えているので安心しています。困った場面でわざわざ探すのではなく、ポーチからパッと取り出せばいい。備えについて人に説明するのも明確で間違いがありません。


防災リュックの中身


ペットボトルのフタに穴をあけて手を洗う例
※少ない水でも洗えます

これだけは入れておきたい! 防災ポーチの中身

私の防災ポーチには以下のものが入っています。万能ナイフ、ソーラーライト、コンパス、防災笛。これはカラビナにまとめています。お薬手帳、現金(小銭)、絆創膏、常備薬、マスク、ウェットティッシュ、手ぬぐい、保湿クリーム、耳栓、生理用品、オリモノシート、ポリ袋、ゴミ袋、保温断熱アルミシート、マヌカハニーの飴、チョコレート、携帯電話の充電器、ペットシーツ、アロマオイル、コンタクト3日分、ペットボトルのフタ(穴を1個あけたもの、ペットボトルシャワーのために使います)。私はこれに「エピペン®」も入れています。これを18cm×15cmのポーチにまとめて、常にカバンの中に入れています。「これがあれば大抵のことは乗り切れる」と思える物を入れておきます。人それぞれ"これがないと不安"というものは違います。日常生活の中で譲れないものは何か?を自分で整理してみましょう。そこから防災ポーチに入れるものがセレクトできるようになります。

※「エピペン®」とは、医師の治療を受けるまでの間、アナフィラキシー症状の進行を一時的に緩和し、ショックを防ぐための補助治療剤です。(エピペンサイト:https://www.epipen.jp)

モノはやわらかい頭で組み合わせて代用する

<防災笛>は、居場所を知らせるために必要。<手ぬぐい>は、ぬれてもすぐに乾きやすいので使いやすく、いざという時、包帯やガーゼ代わりに。マスク、物を包む、濾す、旗にする、石を包めばトンカチにもなる優れもの。<大きめのポリ袋>は、地面に敷いたり、穴をあけて頭からかぶって雨具代わりに。ペットシーツと組み合わせたら災害トイレに。<保温断熱アルミシート>は、雨を防ぐほか、体に巻けば防寒対策にもなります。加熱した鍋をタオルで包み、シートで覆えば保温調理のツールに。笛や保温断熱アルミシートのように、何かあってからでは手に入りにくいものは、優先してポーチに入れておきましょう。<ラジオ>はスマートフォンやアプリでとりあえず代用。そのほか、非常時でも気分を落ち着けるよう、小さいお子さん用のお気に入りグッズは必須ですし、髪が長い人はヘアゴムなど、それぞれのスタイルに合ったものをご準備ください。


常に携帯している万能ナイフ・コンパス・防災笛・ソーラーライト


ペットボトルによってフタの形状が異なるため複数のフタを用意

防災ポーチでいつでもどこでもトラブル回避できる

講演会で、備えについて聞いてみると大抵の人はネガティブ。多くの人が準備をすることで本当に起きてしまうのではないかという不安が生じるからしたくないと言う。これはある意味、正常性バイアスだと言えるでしょう。私は、真逆です。防災の備えはトラブルを回避できるツール。ハッピーなものです。
私が出会ってきた被災者たちは、皆、同じことを言います。
ちゃんと用意をしておけばよかった…と。そしてまだ被災したことがない人たちも必ず持っていた方が良いと言うのです。被災者の体験を自分のことのように感じていますか? 次はあなたかもしれません。防災の備えをしている人は、いざという時に慌てません。そしていつも使っている物を、いつものようにしか使えないものです。日常のお出かけにも防災ポーチを持参しどんどん使うことで、生き延びる人になってほしいと願っています。

辻 直美(国際災害レスキューナース)

一般社団法人育母塾 代表理事
国境なき医師団の活動で上海に赴任し、医療支援を実施。帰国後、看護師として活動中に阪神・淡路大震災を経験。実家が全壊したのを機に災害医療に目覚め、JMTDR(国際緊急援助隊医療チーム)にて救命救急災害レスキューナースとして活動。
現在はフリーランスのナースとして国内での講演と防災教育をメインに行い、要請があれば被災地で活動を行っている。
著書に『レスキューナースが教える プチプラ防災』『レスキューナースが教える 新型コロナ×防災マニュアル』(ともに扶桑社刊)がある。

※掲載の情報は、2021年12月現在の情報です。
※コラムの内容に関する解釈は、筆者の経験に基づく見解であり、公式な情報ではないことも含まれます。

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